探偵事務所や興信所は、ストーカー等の刑事事件に関与することがあります。

興信所/探偵事務所は刑事事件に関わることがある?

興信所や探偵事務所が刑事事件に関わることはあります。
ただし警察や検察などからの依頼ではなく一般の方や法人などからの依頼で、そのほとんどが立件前の段階です。

 

刑事事件の中でもストーカーなど一定のジャンルに集中していて、殺人事件など凶悪犯罪や暴力団を相手にした調査、政治家の不正問題(刑事責任の追及)などは依頼を断られるケースがあります。
まずは刑事事件の仕組みと流れを理解すると、興信所/探偵事務所が関与する余地が分かりやすいです。

 

刑事事件の流れ

刑事事件を取り扱う警察署

刑事事件で罰が決定されるまでの手順には複数のパターンがありますが、裁判によって判決が出る場合の一般的な流れは次の通りです。

 

1.警察が捜査する
捜査するキッカケは個人からの被害届マスコミ報道告発現行犯など様々です。
捜査を担当する警察官が交番勤務や警察署勤務、刑事になるかは事件の内容と状況によって変わります。

 

捜査方法は取り調べや水面下での証拠収集など様々で、任意同行を求めて自白を促す捜査から現行犯逮捕捜査令状を取ってからの家宅捜索など状況に応じたルールに則って行われます。

2.検察による起訴
一般的に軽犯罪は略式命令(略式起訴)による罰金刑で罪を償い、悪質な犯罪や前例のない犯罪は刑事裁判(刑事訴訟)で罪の内容を判断することになります。
裁判をした結果無罪になることがあり、悪質な容疑であっても証拠不十分を理由に不起訴処分で終わることも珍しくありません。

 

起訴する一般的な流れは警察官が捜査した記録を資料にまとめて検察へ渡し、検察官が精査した上で起訴するか判断します。
よく耳にする書類送検は逮捕をしない、もしくは逮捕後に釈放した状態など被疑者を拘束することなく事件を検察官送致することです。
検察官が捜査記録を精査する段階までいった場合は、起訴・不起訴を問わず決定がされたら被疑者へ通知がいきます。

3.検察による捜査
事件によっては検察が証拠品の捜索・差押えや、その分析・検討による捜査を行います。
警察の捜査で全貌が明らかになっている場合は、起訴後すぐに次のステップの裁判(訴訟)へ進むケースもあります。

4.裁判(訴訟)
刑事裁判は原告が検察になり、被告が代理人弁護士を立てて行われます。
(刑事事件は弁護士費用が払えなくても国選弁護士をつけられます)

 

状況に応じて検察官は、裁判が始まってからも追加での捜査を行います。
極めて稀ですが、裁判官が職権を発動して直接捜査することも可能です。
(テレビドラマ「イチケイのカラス」で有名になった制度です)

5.判決
刑事事件で裁判(訴訟)に発展した場合は無罪実刑(執行猶予なしの懲役刑)、執行猶予つきの判決(一定期間だけ刑の執行を猶予し、その間を事故なく過ごせば刑の効力が失う制度)による3パターンの判決があります。

 

興信所へ依頼する状況

 

刑事事件の場合は警察および検察が動いてくれれば、民間の興信所や探偵事務所を利用するメリットが低くなります。
官である警察と検察は特別な権限が認められていて、民である興信所・探偵事務所の調査よりも中身が濃い捜査をすることが可能です。

 

しかし、凶悪性が低い事件は告発や被害届けを出すだけでは警察がなかなか動いてくれません。

 

たとえばストーカ-被害の場合は、実際にストーカーが犯行に及んでいる状況や相手が特定できている状況でないと警察は動きません。
「相手は分からないけど誰かに付きまとわれたり家に不法侵入されたりしているんです」と言っても、警察は証拠を用意するか現行犯で通報してくださいと言って対処するだけです。

 

こうした状況で興信所/探偵事務所へ依頼し、ストーカー行為をしている証拠を掴むか犯人を特定することができれば、警察が動いてくれる可能性が高まります。
つまり、刑事事件における興信所/探偵事務所の需要は警察を動かせる(本気にさせる)目的が中心です。

 

殺人事件などの凶悪犯罪は被害が出た事実があるだけで警察・検察が本気で捜査してくれるため、興信所などへ依頼する理由がなくなります。
探偵業法では凶悪な刑事事件への関与を制限するルールはありませんが、興信所などは専門性がない理由で凶悪犯罪に関する調査依頼を受けないことが多いです。

 

犯人側に加担することは?

こちらに手をのばす犯罪者のイメージ

 

理由を偽って行動パターンや個人情報の調査を依頼し、興信所や探偵事務所が知らずに犯罪へ加担してしまうことはあります。
2012年に起きた逗子ストーカー殺人事件が代表的な事例で、この事件がきっかけでストーカー規制法が改正されました。

 

探偵業法でも犯罪への加担を禁止していますが、具体的な制限がなく依頼を受ければ行動調査などをしてしまうのが現状です。
より厳しい法改正を求める声がありますが、現在は法規制に抜け道があるため興信所へ対して厳しく取り締まることはできません。

 

興信所や探偵事務所は逗子ストーカー殺人事件をきっかけに、従来以上に依頼者の個人情報管理と悪用を禁止する契約および契約前の確認作業に力を入れています。
ただし、怪しい状況でも費用さえ払ってくれれば売上を優先し、悪用について定めた契約書を交わして依頼を受けてしまう3流の興信所・探偵事務所が多数存在しているのが現状です。